傘は要らない

君のヒロインじゃない人生をゆく

ずっと大好き

 

2月下旬のある日、私は悩みに悩んで、推しに1通のDMを送った。その内容を端的に書くとこうだ。

 

「私の職場まで会いに来てくれませんか?」

 

※今回の話は私のわがままが炸裂&皆さんにとってはファン失格だと思われてしまうかもしれません。ご注意ください。

 

 

 

4月から新生活がはじまるため、3月で長い間お世話になった職場に別れを告げることになった。

その職場に、私はどうしても推しに来てほしい理由があった。

 

ずっと迷っていた。友人に相談したこともあった。しかし友人たちから「やめとけ!」なんて言葉は一切なく、簡単に背中を押されてしまった。

一か八かではあるけれど、最終的にはお花畑が決めることだし、送るだけ送ってみたら?ということなのだろう。

リプさえも年に数回送る程度の私だったが、とうとう勢いで初めてDMを送ってしまった。

 

普通は私が会いに行く立場だし、こんなご時世にDMで会いに来てほしいと伝えるなんて、とんだ繋がり厨だ。いや、それよりも厄介な人種になり下がってしまったかも。

どんなに推しのことが好きでも、ファンとして一線を超えてしまうことなんて一度もしたことがなかったはずだ。…たぶん。

でも、今回のことでどんな結果になったとしても、たとえ嫌われてしまったとしても、この職場で働くことになった日から密かに願っていた我儘を叶えてみたかった。

 

 

DMを送った翌日の夜、寝ていたがふと目が覚めてスマホを確認すると1件の通知。

 

まさか。もしかして。

 

深夜に飛び起きた。

 

スマホをタッチする手が震える。

 

アプリをタップすると、推しから返信が来ていた。これも簡潔に書く。

 

「嬉しいお誘いありがとう。

実はその日は仕事で難しいかもしれない。

だから他の出勤日も教えてほしい。

お花畑ちゃんの職場に是非行きたい。」

 

 

 

そんなことある!?!?!?!?!?

推しがわざわざ一ファンのために日にちを調節してくれる!?!?!?!?!?!?

 

メールを送った時点で色々と最悪のシミュレーションをして落ち込まないようにしていたが、それの斜め上を見事に超えていった推し。さすが私の推しは只者じゃあない。

 

夜中に叫んでしまったし、その日は結局眠れずに仕事に行く羽目になった。

でもその日はずっと気分が高揚していて、通勤中はスキップしたいくらい軽やかだった。

 

事情を知っている数少ない友達に報告したら、「この人天国行くな」と言われた。わかる。

 

 

 

それから私は落ち着きをなんとか取り戻した後、他の出勤日を返信し、急いで美容院とまつげパーマとエステを予約。

 

推しと1年ぶりに会える。

その久々の再会が、私の職場で、推しが自ら会いに来てくれるなんて。

 

 

だが、理想と現実はそう思っているほど優しくない。

 

それ以来、推しとの連絡が途絶えてしまったのだ。

 

毎日何度もDMを確認したが、待てども待てども返信は来なかった。

 

他の出勤日も難しかったのかな。

でもそうだとしたら、推しはちゃんと返信をくれると思った。

 

さらに愚かなことに、私には妙な自信、いや、自惚れがあった。

根拠も何もないくせに、推しは必ず来てくれるっていうお花畑な頭をしていた。

 

 

そんなもどかしい夜を何度も迎え、退職まであと2日となってしまった。

 

ラストの日は、推しは仕事で難しいと言っていたので、来るならこの日だと思った。朝から気が気ではなかったが、お給料が発生している以上、仕事は真面目にしなければいけない。

 

一人一人のお客様を逃さずお迎えしたし、心からお見送りもした。

 

その日は新人くんと一緒に仕事をしていて、つきっきりで教えていた。

ちょうどピークの時間で、人がどんどん増えてきて、忙しなくなる。

 

 

 

ふと、視線を感じた。

 

 

 

なぜかこの瞬間、世界がスローモーションになった気がした。

 

 

 

ゆっくりと目線を上に向ける。

 

 

 

 

 

その先にいたのは、間違いなく私が好きで好きで焦がれていた1年ぶりの推しだった。

 

 

夢だったらこのまま覚めないでほしいと本気で願った。

 

 

でもこのバクバクとうるさい心臓は、きっと夢じゃない。

 

 

本当に、会いに来てくれたんだ。

 

 

 

思わず手を振ると、推しは笑顔で振り返してくれた。

そのまま私が来てくれるのを待ってくれているが、他のお客様もいるし、今は新人くんのそばにいないと。どうしよう…!

 

 

 

 

「お花畑!今だけ変わるから行っておいで!」

 

唯一事情を話していた店長が、そう声を掛けてくれて、私は一目散に推しのところへ向かった。

 

推しが私の働いている場所、もとい生息地に足を踏み入れている、推しが、私一人のために。会いに来てくれた。

それだけでもう自分でもよく分からない感情が暴れた。

 

久しぶりの推しを目の前にして、頭は真っ白になる。

が、友達に叩き込まれていたこの言葉だけは口に出せた。

「あと少しで上がりなので、もし良かったらその後お話できませんか?」

 

その後、推しは私の上がりまで待ってくれて、お話しさせていただいた。

 

それもほとんど覚えてないが、私の目の前にいる推しは現実だと噛み締めることは十分にできる時間だった。

 

 

 

 

 

この日、私にはその時間以外に宝物が増えた。

私と推しがマスクをしながらも密になってしまっている写真。

そして別れる前に、推しがおもむろに鞄から出してくれたプレゼント。

 

なんて贅沢で、幸せな日だろう。

 

 

 

別に今回のことで連絡先を交換したわけでも、距離が縮まったわけでもない。

 

でも今回は自惚れないといけない。ほんの少しの気まぐれで、なんていうのは推しさんに失礼だと思った。

 

一ファンのお願いのために、私のために、こんな時期なのに、忙しいスケジュールを調整して来てくれた。

その事実を私はいつまでも忘れてはいけない。

 

 

 

本当に今も大好きだし、推しと繋がることもできた未来があったかもしれない。

 

でも、あの日の、あのひと時は私だけの推しさんでいてくれた。もうそれで十分。

 

これ以上先を願ってはバチが当たると思ったし、この時を悲しい思い出に塗り替えるのは嫌だった。

 

 

 

これが私のガチ恋のゴールだと思いたくないけれど、これからもきっと、ずっと、推しを想うと温かい気持ちになれる。

 

まだ完全には降りられないと思うが、推しからもらったプレゼントを使い切った時、いつか「好きだったなぁ」という気持ちに風化した時、また推しに会いにいけたらいいな。

 

 

 

 

推しさん、最後まで自分勝手なファンでごめんなさい。

 

5年前のあの日からずっと好きでした。

 

いつも真剣で、誰よりも楽しんでお芝居されて、一度決めたことは有言実行されるところ。

 

私の名前を呼んでくれる声が、向けてくれる笑顔が、特別で独り占めしたくなる時も何度もありました。

 

 

 

でも、たくさんの人達に愛される推しさんを見ているのが、1番大好きです。

 

 

 

 

私の人生を変えてくれて、楽しくさせてくれて、本当にありがとう。

 

 

いつまでもお元気でいてください。いつまでも夢を追い続けてください。

 

 

その夢の先に私はいないけれど、推しさんのこれからの未来が輝きに満ち溢れていますように。

 

 

 

ここまで読んでくれた皆さんが、それぞれ推し事のハッピーエンドを迎えられる日を願って。

 

また会える日まで!ありがとうございました!!

 

 

 

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